ボランティアスタッフ紹介Vol.5

 

〝水晶のように澄んで
キラキラとあり続けますように〝

 

そんな願いを込めてご両親は

〝千晶(ちあき)〝

と名付けたそうです。

 

 

 

今回のボランティアスタッフ紹介は

5月に全額クリアを達成した

スギウラチアキ(おかしら)
について綴っていこうと思います。

 

一件、何も問題が見当たらない彼女のボラスタ生涯

しかし、

そこには誰にも深く語られる事はなかった
彼女の奮闘の日々がありました。

 

 

(きっかけ)

 

彼女と出会ったのはいつ頃だっただろうか。

鮮明に記憶している訳ではないのだが

会社帰りのOLのような、
そんなたたずまいだった事は記憶している。

 

そもそも彼女がピースボートを知ったきっかけは
居酒屋のトイレに貼られていたポスターだったという。

何気なく貼られていた1枚。
しかし、この1枚が彼女の今後の行く末を大きく変える事になる。


〝人生に充実してる人にはこのポスターは見えない。〝

 

過去にポスター貼りをしていたボランティアスタッフが残してくれた言葉がある。

きっと彼女もその時、自分の状況に満足できていなかったのかもしれない。

何か変わるきっかけを日々模索していたのではないか、と私は考える。

事実
見つけた居酒屋では合コンの最中だったそうだ。

いずれにせよ

この1枚のポスターがきっかけとなり
彼女の環境は大きく変化していく。

(はじまりの頃)

 

今から2年前の2019年7月13日に彼女は初めてのポスター講習を受ける。
そこから差はあるものの、月に2回くらいのペースで活動をしていた。

そして彼女が正式に活動を進めだしたのは翌年の2020年2月からになる。

しかしながら
彼女も他のボランティアスタッフ同様
そこからどうする事もできない世界規模の問題によって
活動が一旦中断されてしまう。

そのような事情により結果、
本格的に活動の狼煙をあげたのは約半年後の2020年8月。

ここから漸く彼女のポスター生涯の幕が開かれていく。

 

今、振り返ってみて
とても辛かったと彼女が語るのは
この時の地元貼りだったという。

地元貼りとは、その名の通り
ポスターを持ち帰り自分のペースで地元を貼る、という方式。
(エリアに関しては各ピースボートセンターのポスター担当と相談になる)

メリットは、ピースボートセンターに出向かなくても自宅からそのまま貼りに行く事ができる。

また1時間だけ貼りに行きたい、等。時間の融通も利く。

しかしデメリットもある。
それは一緒に貼る仲間と会えず、孤独にもくもくと作業をしなくてはならない事だ。
最初は割引の為と割り切って、意気込んでポスターを持ち帰る若者もいるが

最終的に仕事やプライベートを優先してしまい、結果、ポスターを余してしまうというケースも少なくない。

彼女も夏場の優れない天候や猛暑も重なり、この時は苦労したそうだ。

しかし、彼女にとっての
本当の苦闘はここからだったー。

 

(50万の壁)

 

ポスターを貼って、全クリを目指すにあたって

大事な心構えがあるとするなら

″目の前の1枚1枚をひたすら追いかけていく″事だと熊井は考える。

後、残り何万円分貼らないとならない
後、残り何枚貼らないといけない
という考え方は非常に道のりを遠く感じさせてしまう。

 

 

残り50万まで迫ったとき、彼女はスランプに陥る。

残り半分の折り返し地点に到達した時、
貼りにいくのが苦痛になってしまったのだ。

今、自分が駆け抜けてきた道のりを
もう1度繰り返さないといけない現実が
決意を鈍らせたのか。

夏の猛暑による体調不良で
眩暈で倒れた為か。

原因は様々あると思うが

この半分クリア(半クリ)
を成し遂げた時期が

最も貼りに行きたくなかったと
後に彼女は語っている。

(ベテランとして)

 

そんな暗闇から抜け出すために

彼女は
夢の地球一周の実現を信じて
ひたすら己と向き合い戦い続ける。

そして再び生還する。

彼女のボラスタ生涯の後半を飾るのは
初心者講習である。

初めてポスター貼りを行う初心者は
必ず講習を受ける必要があって、
貼り慣れたベテランと同行する。

まさに彼女は
そのベテランとして
最重要任務である初心者の育成を担ってくれた。

そもそもベテランを選ぶ基準とは。

熊井が強く言いたいのは
貼れる人がベテランになる訳ではない。

〝次に繋がる講習ができる人〝
ベテランとして選んでいる。

極端に言うならば

100枚貼れたが
次、初心者が来なくなるのと

11枚だけしか貼らず後はお茶だけして帰ってきた、しかし
その後初心者が次も来てくれる

この2択ならば
後者をベテランとして選ぶという事である。

その定着に最も繋ぐ事ができる
ボランティアスタッフは

スギウラチアキである、と
私含め名古屋スタッフはそう確信したのだ。

そんなボラスタ生涯の中で
彼女は約10人程初心者講習を手掛けてくれた。

 

時に
休憩時間が長い初心者の子もいたり
本当に心配を残したまま終えてしまった講習もあったという。

だからこそ
そんな心配だったボラスタが
その後、活躍してるという噂を耳にすると安心するのだそうだ。

きっと
常に母親の様な心境で皆の事を見守ってくれていたのではないだろうか。

熊井はそう思う。

そんなボラスタからも偉大なる存在で

数々の魂を新たな船士に捧げてくれた
スギウラチアキは

2021年6月12日に、
約2年の時を経て、遂に全額クリアを達成するのであった。

 

 

(振り返ってみてー)

 

改めて

彼女のボラスタ生活の中で
ポスター貼りへの本音が語られる事は多くなかった。

皆の心境も考慮した上で
苦しかった日も、叫びたい日も
心の中にしまっていたのかもしれない。

しかし、
掴んだ夢の地球一周の切符が物語るように、
最後は紛れもなく自分の決意が勝ったのだ。

そして、近い未来
居酒屋で見つけた何気ない1枚のポスターが
遂に現実の物となるのだ。

そんな地球一周に彼女は
何を求め何を探しにいくのだろうか。

また、その何かは見つかるのだろうか。

私が思うに、
それは難しい事ではない気がする。

ただ、彼女らしくあり続けさえすれば良いと思うのだ。

ここで過ごした
ボランティアスタッフ生活同様に、

船でも変わらず

水晶のように澄んでキラキラした存在であり続ければいい。

 

そうあれば彼女の探し物は
きっと船でみつかるだろう。

熊井